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俳句

2018/11/30

亡き妻が 手塩にかけし 五月咲き 若き女の 指そっと撫で

ジジババと 分類されて 今もなお すれちがう美女 一撃浴びる



俳句

メキシコ風 夕焼け空の 嵐去り

風薫る 飛び出す園児  喉裂けて

ギンギラの 朝の光浴び SATSUKI燃ゆ

モスクワ や 肌に突き刺す 五月風

葱坊主 赤の広場は 五月晴れ

モスクワの 夜は光り満ち ささめ雪

新緑の 薫吹き抜く ゴーリーキー公園

タワマンに 夏の太陽 お地蔵さん 

タワマンの テラスに地蔵の 影落とし

春冷えや 七色の噴水 夜空裂き

菜の花や 美女立ち止まる 地蔵かな

精悍に はやぶさ舞いて 藤ゆらす

桜散る 川面を逆上 ヘリコプター

夜桜に 伸ばす指さき 凍りつき

ひたすらに 走る黒シャツ 桜舞い

満開の 桜に重なる 赤リボン

早春の 冷たき風に 涙ふく

春の嵐 むくむくと湧く 入道雲

バシバシと 鳴り響く波音 冬の宿

氷上の 貴婦人滑る マチスかな

雪つもり バス停かすむ 最後尾

じゃれ渡る 母と子の靴 雪つもる

公園に 集まりし母子 寒気とばす

大晦日 満員電車は ブラック

暖冬の 落葉ずしりと 竹ほうき

暖冬の 大気を吸いし 紅葉かな

フェルメール 黒髪の長蛇 上野かな

クリスマス ラブリーナイトの 熱き唇(クチ)

クリスマス 男ひとりの ケーキ買い

干竿に 胴体着陸す 赤トンボ

晩秋の 空に溶け込む 白き月

園児らの 笑顔あつめ 母走る

赤信号 指絡め待つ 落葉かな

公園に 降り注ぐ太陽 影ながし



 

墜落

2018/06/04

墜落、自家用ジェット機
海底から引き上げられ修復されたボイスレコーダーの記録;
墜落直前の録音内容:

「あれはよかったろう」「ああしてほしいんだろう」

「おいどうした、なかにいれろ。私をなかにいれろ、なにが起こってる?

なかにいれろ」

「あばずれ」「あのあばずれ女め」

「くそ、くそ、くそ、くそ」

「バン、バン、バン、バン」

「だめだ」

『あ』
コックピットで操縦桿を握る副操縦士のつぶやきとコクピット外からの機長の叫び声に重なるボディーガードが発射した拳銃音の記録だ。

事故調査関係者のなかで真っ先にこの録音を聞いた連邦運輸局事故調査委員二人の会話ー
「ボス?」
「ああ、聞いたよーーー」
「彼だったんですね。彼が女のことをこじらせて、あの客室乗務員とのことで」

2017年のアメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞作「晩夏の墜落」。その墜落機のコックピットのボイスレコーダーの記録である。
いわばこの小説の のエッセンス部分だ。
このわずか100文字に到達するために25万個以上の文字が費やされ、読者を飽かせることなく一気に引きずり込む。
640ページ余の長編サスペンス小説。
最優秀賞作品ならではだ。お金払って読む価値あり。

 アメリカの大富豪が所有する豪華自家用ジェット機がニューヨークから遠く離なれた高級避暑地近くの海に墜落する。
9名の命が失われ2名が助かる。
現場捜査の責任者である連邦事故調査委員会主任の錯綜しつつも冷静かつ客観的判断力。その思考過程の全てと、途中から捜査の主導権を握ったFBI主任捜査官の権力をうしろだてにした強引な捜査。
ーー自己中心思考と振舞い。
そして全米のテレビ視聴者に絶大な影響力を持つ大物コメンテイター兼司会者の人の意見に全く聞く耳もたぬ傍若無人振り。
現代アメリカ社会の切実な問題点を浮き彫りに一つ一つの断面が切り出されて興味尽きない。

 ジェット機を墜落させた直接の犯人の副操縦士と、一時期は彼の恋人であった女性客室乗務員との複雑に絡みあいそして決して一致することのなかった両者の深層心理が悲劇の引き金になった。

機長であるベテラン操縦士と富豪一族のガイドの詳細な描写にも必然性がある。

ストリーは非ミステリアスな話題も幾重にも重なっていく。
奇跡的に生き残った4歳の男の子と荒れ狂う海の中でその子の命を助けた無名画家。主人公である画家は偶然にもその遭難気に乗り合わせてしまう。
そして、絶体絶命の死の海から命がけの脱出に成功し、一気に英雄に祭り上げられる。
美男(主役の男は必ずイケメンと相場がきまってるが)の彼を奪い合う3人の優雅な美女達との愛とセックスが展開される。
あまり嫌味を感じさせずにモテない世の一般男性読者へもそれなりのサービスも。

他人を思いのままに操つる絶対的権力へのあくなき欲望。
無限に膨らむマネーへの渇望。
コントロール不能にまで持続するセックス本能。
求めるものに男と女の差はない。

 いつの時代でも、現代社会も我々をかずかずの欲望が取り巻いている。
理不尽な嵐のような数々のストレスに打ち勝って1ケの大きな幸運を手に入れた人。
複数のそこそこの欲望をかなえた人。
空振りの果て両手を広げて呆然とする人。
人間とは成功と失敗の流れに翻弄されさまよう生物。
 カミユの名作「ペスト」が20世紀を代表するスーパーショットなら、このミステリーは難しいバンカーショットからの脱出である。100に1回のチャンスを成功させ、しっかり女神を捕まえた。

 このミステリー大賞受賞の傑作が細かな規則とクソ定規に縛られたなかで日々の生活を送っている日本人の目にどのように映ったのか。
せせこましい日本人の脳細胞から見るとこの小説はいわゆるミステリー小説の分類、概念からは外ているのだろう。
だから日本ではベストセラーにならなかった。
 平凡な男女の恋のもつれが生み出す深層心理の複雑な絡みが、しかもたった一本の糸のもつれが大事故の原因となった。
その後のストリーの展開が謎解きとは無関係ではミステリーの外枠と切って捨てられてしまった。
 こういう評価の相違は根源的に欧米人と日本人との差だ。
日本人特有のガラパゴス的発想が日本国内の狭小なミステリーの定義、定規の合致しなかった。
 今回、日経新聞小説大賞を審査した3人の作家たちが、もしこの小説を読んだなら(読まないだろうなあ)どのような評価を下すかなと想像するのも一興。
あのような小説に500万も贈与するなんて。
50年間、日経新聞紙代を払ってきた読者としては少々懐の痛みをかんじる。

 

 

 

蘇州夜曲の原点を求めて

2018/05/14

蘇州に空転ー「蘇州夜曲」の虚と実


君がみ胸に抱かれて聞くは
夢の舟歌ーーー
水の蘇州の花散る春はーーー


オールドエイジには懐かしい蘇州夜曲」は昭和15年8月に発表された。
映画の主題歌である。
 
 中国大陸での戦争が拡大を続け、軍国主義一色の重苦しい空気が満ちていた当時の日本。もはや手の届かぬ彼方に失われた郷愁のロマンを偲び現実との落差を感じ取っていた大衆の心を虜にしたのである。

 時は奔流となって流れ21世紀の現代。
いま世界は米中2つの大国に支配されてしまった。その一方の雄に成長し世界経済を牽引する巨大国家へと変貌した現代中国。
かって蘇州は多くの日本人には女優李香蘭の放つ妖しい美貌と歌に様々な思いを託した想像の街であった。
私は小学校1年生だった。

あれから80年、今の蘇州はどのような姿を見せているのだろうか。 上海から新幹線でわずか30分。
まずは巨大な駅舎との対面。
マンモスの肋骨を思わせる大天井と広い空間。
いまや世界中の観光都市で出会う無機質な物理的光景も蘇州の一つの顔だ。

過去の幻想を胸に旧市内へ。
「蘇州夜曲」に歌われる水路の幅は狭く、一直線に伸びた一本の川である。
両岸には土産物屋の家家がびっしり並ぶ。 中国特有の赤いランタンがごたごたと軒先に連なり埋め尽くす。風に大きく揺れながら。
そんな商店街はいつも大勢の観光客でごったがえしている。
息抜きは中世に建立された色あせた朱塗りの古いお堂。背後の寺院の伽藍が生い茂る緑の樹木越しに顔をだしている風景だ。
  金銀細工をほどこした派手な土産物の数々が店の奥まで陳列されている。大店、小店どれも同じようだ。
しかし時たま顔を見せる高級店の大きなガラスウインドウには高価な絹織物のドレスが優雅なカーブを描き、漆と金粉で描かれた名画が鮮やかな二つ折り屏風が印象深い。
街のほぼ中央まで歩いてくると円形の欄干橋が。
石段の角度はきつい。
映画の中で二人の主人公が再会したゆかりの橋?
映画のシーンはどうだったのだろう。
周囲の柳も伸びきった枝先を川面に垂らしている。
  20メートル幅の両岸に連なるホテルやレストランの窓には観光客の群れ。 川の水は淀んでゆれ動く漣が太陽の光を鈍く反射している。
原色の真紅や黄色の長方形の観光船の屋根も川の風情に溶け込んでいる。
古い白壁と赤瓦屋根を背に佇んで人々は何を感じているのだろうか。
西の空一面を掃いたような薄雲がひろがり、差し込む太陽の光を受けた 岸辺沿いの木製の椅子に腰を下ろしてしばし目をとじて「蘇州夜曲」の原点。
見えた?見えない?

 見事に区画整備された美くしい広大な駅前広場。
駅正面には⒉つの大型超高層ビルが威容を誇りそのはるか先には上海で見慣れた高層ビルが林立している。
上海から蘇州を走る新幹線沿いも同じ風景だ。
線路沿いの中高層ビル群は比較的整然とした構成で次々に現れ、短い時間帯で低い潅木が断続的に続く。
  蘇州は今や中国でも有数の近代的な都会である。

 誇りを心のそこに秘め肉の落ちた胸をぐーっと張れる「おじさま」と言われる人生の最後の境界線は75歳。
 アインシュタインは言っている「人類の進歩の中で霊的側面が進化すればするほど、真の宗教性に通じる道は生の不安、死の不安の中にはなく、合理的な知識のあとの努力のなかにあると」。
  「ナブッコ」で歌われる「行け、わが想いよ、 黄金の翼に乗って」の黄金の翼なみの最新鋭のボーイング777の翼は正確なナビゲーターシステムを駆使し最短2時間15分で上海と羽田を結ぶ。

  作詞家西条八十氏は青く清く澄み切った水路の岸辺で情熱的に抱擁し運命にもて弄ばれる悲運の男女の像を、あるいはその姿に自分を重ね合わせ「蘇州夜曲」を生み出した。迫り来る軍靴の音を背に感じながら。

しかし事実は全く違うから驚きだ。
映画の脚本を読んであの胸に迫る悲恋の歌詞を書き上げたとは。一歩も蘇州の地を踏むことなく。

 75歳を過ぎて、自分が長年抱いてきた「蘇州夜曲』誕生の秘話が存在しないとは相対性原理に反してるよ。 イマジネイションとリアリティティーの橋渡し役を見事に果たした西条先生の職人技に脱帽。
註;蘇州夜曲関連文献等はネット上で検索)